手もみ茶のこと

現在、茶の製造は機械製茶が一般的ですが、その製茶機械も手もみ製茶をもとに開発されました。
手もみ製茶は機械製茶の基本であり、手もみ茶製造時の感覚は、機械製茶時の茶葉の状態確認、
機械の設定を行う上で大切であるため、手もみ製茶を通じて己の感覚を磨いています。

手もみ茶製造にかかる時間は7時間、茶葉の状態に合わせながら揉み、針状に伸ばしていきます。
手もみ茶は一度に揉める量には限界があり、一回に1.5キロの茶葉を揉み300gしか生産できません。
その為、全国的にみても生産が少なく、希少価値の高いお茶であります。

手もみ茶ができるまで

茶製造においては、「基本に忠実に」を意識し、
茶葉の温度をホイロ※を用いて人肌(36℃)にし、茶葉表面水分と茶葉中水分を気にしながら、
茶に「しとり」を持たせ、手技で針状に乾燥させていきます。

※ホイロとは?
手もみ茶製造時に使う作業台です。
助炭・火炉・ガスバーナー・木台の4点から出来ています。
木枠に和紙を数枚張り付けたものを助炭と呼び、助炭の下には火炉があります。
火炉の熱源にはガスバーナーを用いています。

1.生葉

近くの山々が綺麗な緑色に染まる4月下旬の瑞穂町、厳しい冬の寒さを耐えた茶の木も、艶やかで綺麗な緑色のしっかりとした力強い新芽を伸ばします。

その新芽を一芯一葉や一芯二葉で丁寧に手摘みし、新鮮なうちに蒸します。
蒸すことにより茶葉中の酸化酵素の働きを止め、茶葉を緑色のまま保持でき、青臭い香りから甘い香りへと香気の発揚を促し、そして、葉が柔軟になり揉みやすくもなり、お湯を注いだ時に茶葉成分を浸出し易くします。

2.葉振い(60分)

蒸した葉をホイロへと移し、茶葉を拾い上げ、手を左右交互に動かし、 茶葉を空中に舞わせては落とすことを繰り返します。

序盤は茶葉表面の水分を取り除き、その後は茎が萎れるまで余分な水分を取り除いていきます。

3.軽回転(40分)

最初は1秒間1往復の速い動きで助炭を最大限使用し、手中に茶を少量抱えて茶団を作り、左右に転がしつつ、手中の茶を入れ替えながら揉み、茶葉中の水分を出していきます。

工程中乾いてきては抱える茶の量を増やし、転がす速度も徐々にゆっくりとし、力を入れて揉み、更にしっかりと揉むことの出来る重回転へと移っていきます。

4.重回転(20分)

軽回転後半から転がし幅を狭くし、茶葉中の水分をしっかりと出すため、茶葉がムレないように注意しながら力を入れて、ゆっくりと練るように、転がしながら揉みます。

5.玉解き(5分)

一団となった茶を、重回転から軽回転へと工程を戻すように、転がしてほぐしていきます。
更にほぐすために、手を熊手状や平手にして、左右交互に素早く動かしてほぐします。

最後に茶を手と手で軽く挟み、前後に動かして茶の絡まりを取る「玉解き揉み」を行い、中上げとなります。

以上が茶製造でいう「下揉み」になり、しっかりできていないと、この後行なう「仕上げ揉み」が上手くいきません。

6.揉み切り(30分)

揉み切りは、茶葉一本一本が丸よれになるように型をつけるために行い、
序盤は、手と手の間に茶を挟んで抱え、力を余り加えずに前後左右に動かして散らして揉む「振り揉み」を行い、乾くに従い力を入れて、茶を抱える手の上下から、茶が落ちるように揉み込む「揉み切り」を行います。
さらに揉み込むために「転繰揉み」へと移っていきます。

揉み切りは手もみ工程の中でも1番難しい工程であり、熟練した技術が要されます。

7.転操(40分)

茶葉を助炭上で茶の向きを揃えて併せ持ち、少し傾けて、左右に移動しつつ、手中で転がるように、手を左右交互に返して揉みます。

前半は、茶を散らばせて揉む「散らし転繰」を行い、後半は茶を散らさずにゆっくりとその場で力を込めて揉む「強力転繰」を行って茶を揉み込み、伸ばしていきます。

8.こくり(60~90分)

助炭上で茶の向きを揃えては、助炭に対して垂直に両手で茶を抱えて揉み込んでいきます。
こくり揉みによって茶は針状に、そして艶のある茶へとなっていきます。

こくり揉みで抱えることができなくなると、仕上げ揉み終了のサインで「乾燥」へと移ります。

9.乾燥(90~120分)

写真のように茶を並べ、助炭温度が60℃前後で、15分に一度茶を裏返し、乾燥させていきます。

ギャラリー

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